結局のところ、セシルの足に大きな怪我はなく、一時的に痛めただけで、夜になれば腫れも収まり普通に歩けるようになった。

「ルーファス様、恰好よかったわね」

大理石の浴場で、湯の張った大きな浴槽に浸かりながら姉のシャンテルは呟いた。

「『セシルを必ず守る』!」

「そんな言い方してなかったわ」

「してたわよ~! まるでルーファス様がセシルと結婚するみたいだったわ!」

頬を抑え体をくねらせるシャンテル。その拍子にパシャパシャと水飛沫が飛んで、セシルは顔をしかめた。

「お姉様、興奮しすぎ」

「だって、自分のことのようにドキドキしちゃったんだもの!」


姉妹揃って湯に入るのは久しぶりだった。
昔からシャンテルは、茶会で出会った紳士が恰好よかったとか、夜会でダンスを踊った侯爵様が素敵だったとか、色恋沙汰が起こる度にセシルを湯に誘う。
恋話は湯に浸かりながら姉妹水入らず、というのがシャンテルの流儀のようだ。

「庭園でも、ルーファス様に守っていただいて」

「あれはたまたま近くにいたのがルーファス様だったから……」

「ルーファス様に抱きかかえられているときのあなた、真っ赤だったわ」

「相手が誰であろうと抱きかかえられれば赤くなるわ」

実際のところ、ルシウスにも抱きかかえられたセシルだったが、やはりそれなりに顔が赤かったと思う。

どちらのときが赤かったかと比べれば、おそらくルーファスのときだと思うが――あれはルーファスがからかったせいであって、恋愛感情に直結したものではないとセシル自身は思っている。

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