ブザービーターは君のため
3.千尋side:部活とのんちゃん
「部活決めた〜?」

 高校1年生。
 春から初夏に季節が移り変わる頃。
 部活を決める時期だ。

「う〜ん。
 真央ちゃんがバスケいいよ〜って。」

「やっぱり千尋はバスケやるんだ。
 っていうか真央ちゃんって誰なの?
 も〜。重要なとこ飛ばして話す癖、どうにかならないわけ?」

 怒った顔を作っても、プーッと吹き出しちゃうのが柚羽。

 怒られるのが嫌で、私が柚羽の前で変顔してるせいなんだけどね。

「本当、千尋といると飽きないわ。」

 柚羽とは名簿の席が前後で話したのがきっかけ。
 私の背中に隠れて黒板が見えないんじゃないかって話しかけたのが始まりで。

 150あるかないかの小さい柚羽。
 対する私は………。

「で、部活もいいけど、誰かいい人いた?
 高校生になったら恋するのが楽しみだったんでしょ?」

 ニマニマ聞いてくる柚羽にため息しか出ない。

「いいなって思える人できないわー。
 見下ろしちゃう人ばっかりで居心地悪いなぁって思うくらいで。」

 クラスで千尋の方を見下ろす人の方が少なくて、その数少ない中の1人が話に加わった。

「ここに優良物件あるのに気づかないかな〜?」

 満面の笑みで自分を指さしている。

「大悟先生はチャラくて胡散臭い。」

 大悟先生はケラケラ笑う。
「千尋ちゃんまで〜」と言っている辺り、みんな周知の事実みたいだ。

「ま、高校男子なんてすぐ伸びるぞ。
 だいたい背のことで候補にならないんじゃクラスの奴らは男としてまだまだってことだな。」

「聞き捨てならないこと聞こえたぜ!
 大ちゃん!何言ってんだよ!!」

『クラスの奴ら』の張本人達が離れたところから口を挟んだ。
 男としてまだまだってのが聞こえたようだ。

「大ちゃんとはなんだ工藤先生と呼びなさい。」

 セリフほど怒っていない大悟先生は笑いながら男子の方とじゃれ始めた。


「昨日のあの喋らない人。
 あの人が顧問なんでしょ?」

 そっか。そうだった。
 あの人、独特だったな。

 それにすごく背が高かった。
 目が切れ長で少し怖い顔だけど、なんかカタコトで面白かったし。

 とりあえずあの『のんちゃん』とか言うデカイ人の身長が何センチか聞けるならバスケ部に入ってもいいかな〜。

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