規則的に床を鳴らす靴の音。

苛ついた気持ちを落ち着かせるためのような貧乏ゆすりをチラリと視界に捕える。

隣に掛ける俊(しゅん)くんは、私の方を見ようともしない。

宙に視線をさまよわせて、時折『まだなのか』と言わんばかりに受付けを見やる。

膝の上に置いたバッグをギュッと握り締め、気付かれないように小さく息を吐き出した。

向かいには、身幅があるゆったりとしたマタニティワンピースを身にまとった妊婦さんがいる。

愛おしそうに大きなお腹を撫でる朗らかな表情に、隣にいる俊くんに再び目を向けた。


「ねぇ、やっぱり……帰ろうよ」


控え目な声で言ってみたものの、俊くんは「あぁ?」と周囲の人が注目してしまうような荒っぽい声を上げた。

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