不機嫌なジェミニ
不吉な予言。

双子座のオトコ。

1月中旬。朝8時。

2人がけの小さなソファーの横に置かれた縦長の鏡の前で笑顔を作ってみる。
ジュエリーの専門学校の卒業を3月に控え、目下就活中の私。藤野 透子(ふじのとうこ)21歳。

155センチ。標準体重。
二重の下がり気味のおどおどしていると言われる瞳の目尻はアイラインでキリリと修正し、
おきまりの黒スーツに白いシャツ。
ゆるくパーマがかかったボブの前髪は黒ピンでキュッと留め、
苦手なコンタクトレンズをなんとか目の中に押し込み、周囲がくっきり見えることの確認をする。


私が希望している職種は
ジュエリーデザイナーっていう厄介な仕事で、
経験のない学生の私に、
販売の仕事はあるけど、ジュエリーデザイナーの募集なんてほとんどない。
大きなため息が本日も出る。
専門学校の友人は多くが販売に切り替えて就職を決めている。

今日の面接がダメだったら
販売に切り替えようか…

デザイン画の入った大きな黒いトートバッグを確認してから
テーブルについてトーストをかじる。

一緒に住んでいる短大1年の妹の香澄(かすみ)が部屋からよろよろ出てきて
「あー、飲みすぎた。頭痛い」と言って冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、
2人がけのダイニングテーブルの前の椅子にドスンと座った。

2歳下の妹は
ジュエリーデザイナーなんて夢を追う私と違って、手堅く栄養士を目指していて、
飲み会や、サークルで私とは違う意味で忙しそうだ。
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