「彼女は、気が利くな」


 なにかトラブルでもあったのかとふたりの背中を見送っていると、社長が感心したように呟いた。


「そういうところはさすが姉妹だ」


 そばを見上げると、社長もまた私と同じように彼らを見送っている。

 その瞳に映っている感心の矛先が、妹に向けられていることに、ちょっとだけ胸の奥がもやっと揺れた。


「あの義弟くん、ずいぶん熱心にお前のこと気にかけているようじゃないか」

「す、すみません、義弟が大変失礼な態度を取ってしまって……」

「いや、俺も少し煽ったようなもんだからな。彼には申し訳ないことをした」

「え……?」


 今の大人な態度の社長のどこに、非があったんだろうか。

 きょとんとしてまばたくと、社長はふっと口の端だけで笑った。


「どうやら君は、自分のことには少し鈍いところがあるようだ」


 どういう意味なのかわからず首をかしげるしかできない私に、社長は目を細める。

 とてもやわらかな雰囲気に、また小さく鼓動がはねた。


「夕食、行くか?」

「あ、はい、ぜひ」


 とても珍しい表情に、うっかり見惚れてしまいそうになりながらもこくりとうなずき、安堵する胸のあたたかさをじんわりと感じていた。



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