冷徹社長の容赦ないご愛執
「しゃっ! 社長……っ!」

「やっと目覚めたか、このやろう」


 思わず上げそうになった悲鳴に代えて、社長を呼ぶ声は甲高くひっくり返った。

 私の声に顔をしかめる社長は、一番新しい記憶と変わらず浴衣を身にまとったまま、私のすぐそばで横になっていた。

 目の前にある色っぽい浴衣の胸元は少しはだけ、たくましい胸板が色気をだだ漏れさせている。

 ここがベッドの上だと気づくなり、白々しく窓から差し込む日の光が一夜を越えたことを私に知らしめる。

 途端に、我が身を抱きしめながら飛び起きて、見慣れた部屋着を見下ろし記憶を巡らせるのは昨夜のことだ。

 社長がうちの前にやって来て、一緒に飲もうと言われて……

 旅館の部屋のソファでグラスを合わせてから、私は社長に……


 ――『好きなんだ、佐織。君のことが』


 ……こ、告白をされたんだった……っ。


 どくどくとうるさく鳴り響く鼓動に顔を赤くすると、そのあとの記憶が曖昧で身を守るように自分を抱きしめた。
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