できるだけ穏やかに言い換えたつもりだったのだけれど、社長の語気がどうにもいい雰囲気を醸さなかったらしい。


 ――『本当にこの会社の指揮を取っていた玉なのか? 会議の邪魔をする指揮官がどこにいる』


 浅田室長を制した社長の言葉の後半は、伝えれば絶対に角が立つと思った。

 社長の言ったことはごもっともだと私も思ったけれど、ここはわざわざすべてを訳す必要はない。

 穏便に事を運べるのなら、それが両者にとっても会社にとってもいいに決まっているからだ。


 遠慮のないはっきりとした物言いをするのは、米国育ちの彼ならしかたのないことなのかもしれない。

 けれど、日本人の相手を気遣い思いやる風潮とは、やっぱり多少の温度差がある。

 郷に入れば郷に従え、ということわざが日本にあるように、“When in Rome, do as the Romans do”と向こうの国にも同じ意味の言葉は存在しているはずなのに。

 それでも、社長は思ったことを地で口にするから、わかってはいたけれど、通訳として付いている私のほうが顔を青くしなくちゃいけない。