PMに恋したら
迷子の猫ちゃんの初恋



人が増え始めた夕方の駅のホームに電車が到着するアナウンスが流れる。
友人と並んで柱に寄りかかって立っていた私は、数メートル先でフラフラと歩いていたおじさんがだんだんとこっちに近づいてきていることを目の端で捉えていた。焦点の合わない目つきで私たち二人を見ては口から涎を垂らしている。

実弥(みや)?」

友人に名を呼ばれて私はおじさんから目を背けた。

「あんな気持ち悪い人見ちゃだめだよ。うちらが見てるからって更にこっちに寄ってくるかもしれないんだから」

友人は眉間にシワを寄せておじさんを一瞥すると一歩ホームの奥へと足を動かした。

「うん……そうだね……」

私も友人に倣っておじさんから距離をとる。フラフラしながら壁にぶつかり、しゃがんではまた立ち上がるおじさんは酔っているかのようだ。おじさんが私と友人の制服のスカートから覗く太ももにいやらしい視線を向けてきた。それに自然と警戒心が強くなった。
電車がホームへ入ってきたことにほっとして足元の乗車位置のマークまで移動しようとしたとき、私の右腕が何かに引っ張られた。

「うわっ!」

よろけた体を立て直して右を見ると、いつの間にか近くに来ていたおじさんがにやついた顔のまま私の腕をつかんでいた。近くで見ると着ている服が所々汚れている。

「なぁ……おねーちゃんお金かしてよぉ」

おじさんはアルコール臭い息を私に吐きかけた。

「それかぁ、おじさんと遊びにいこうかぁ」

「やだっ!」

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