「おはようございます」
丁寧にお辞儀をして、笑顔で列席される方の案内をしつつ、追加で入ったヘアメイクの希望が可能か調整を取ったり、小さい子供の相手などをして、式が始まるまでを忙しく過ごしていた。

ようやく列席者の入場も終わり、式が始まり麻耶は一息ついて、事務所に戻るために館内を歩いていた。

正面玄関から入ると、ホテルのロビーのような広い空間がひろがっているその場所で、きょろきょろ周りを見渡している男性がいた。
70代ぐらいだろうか、割腹のよい初老の男性だった。
「いかがなさいましたか?」
麻耶はにこやかな微笑みを向けると、その男性に声を掛けた。
「今日、昼に家内と昼食を取るために待ち合わせをしているんだが、場所がわからなくてな」
少し困った顔で話すその男性を麻耶はすぐ横のソファーに案内をすると、その横に膝をついて話を聞く事にした。

「ありがとうございます。本日の昼食は和食とフランス料理どちらをご希望でしたでしょうか?」
この式場の中には、一般の客も入れる和食とフレンチレストランがある。
フレンチレストランはミシュランで星を取った人が総料理長も務めており、式の料理の監修もしておりその料理のおいしさもこの式場の魅力の一つだった。

「家内が予約をしたと言っていたからな……」
少し困った様子のその人に、麻耶はにこやかな微笑みを浮かべると、
「恐れ入りますが、お名前を頂戴してもよろしいですか?すぐにお調べいたします」
「ああ、白木といいます」
「白木様ですね。少々こちらでお待ちくださいませ」
丁寧にお辞儀をすると、麻耶はすぐ入り口付近のインフォメーションに向かい受話器を取った。