◇◇◇

周囲にあるのは五百着近いドレスと、それ以上の数の帽子や髪飾りなどの装身具。

それらをかき分けるようにして、細い通路を奥へと進んでいた。

ここは王妃専用の衣裳部屋で、今朝のお召しものを、私は注意深く選んでいく。


今日も暑い一日になりそうだから、涼しげなものを……。


夏らしい澄んだ水色に、細やかな草花の模様が刺繍されたドレスを手に取る。

髪飾りと靴も寒色で統一し、それらを抱えて足早に衣裳部屋から出た。

目の前には藍色の絨毯敷きの長い廊下があり、精緻な彫刻の施された美しい木目のドアが不規則間隔に並んでいる。

廊下を行き交うのは王城で働く使用人たちで、明り取りの窓から朝日の差し込むこのひと時は、特に忙しそうに見えた。


私はメイドではないが、この城に住まうようになった十日前から、彼女らと同じように忙しい朝を過ごしている。

足早に廊下を進んで衣裳部屋のふたつ隣のドアの前に立ち、二度ノックする。

「入りなさい」という声を聞いてからドアを開け、足を踏み入れるや否や、「遅いわよ!」と王妃の怒声が飛んできた。

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