◇◇◇

ダービーから二十日ほどが過ぎ、冬も寒さを増している。

私はアマーリアのいない寂しい王城の自室でひとり、レース編みをしているところだ。

今は真夜中だけど、ベッドに入っても色々と考え事をしてしまい眠れない。

二時を過ぎてとうとう眠ることを諦め、小さな火の燻る暖炉の前に椅子を寄せ、編み物をすることで不安に揺れる心を落ち着かせようとしていた。


それでも頭に、ロザンヌ嬢の顔が勝手に浮かんでしまう。

絶望に打ちひしがれ、涙を流す彼女の顔が。

もっともそれは想像で、ダービーの日以降、会っていないし、この先も二度と顔を合わせることはないと思うけれど……。


最近の王都はざわついており、貴族たちはヒソヒソと囁き合って、レオン様の顔色を窺うように暮らしている。

その原因は、アクベス侯爵家が取り潰されたからだ。


私が宥めてもレオン様の激しい怒りは収まらず、厳しい取り調べにて息も絶え絶えなアクベス家の騎手から自供が引き出された。

毒針を馬の首に刺して暴れさせ、私を落馬させて亡き者にしようとしたことを。

そして、それを命じたのはアクベス侯爵だと騎手は白状した。

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