たった一度のモテ期なら。
和臣って名前は呼びやすくはないらしく、俺の呼び名は昔からたいてい西山、たまにニシっていう奴らがいるくらい。

「カズくん、頼みがあるんだけど」

だから人もまばらになりつつあるこのオフィスで俺をカズくん呼ばわりできるのは1人しかいない。



無言で振り返ると、怖いよ、とわざとらしく震えられた。

「かわい子ぶっても無駄」

「ひどい。前はそんな態度じゃなかったのに」

俺もう帰るところなんだけど、なんなんだよ。だから社内に彼女がいるとか嫌だったんだよ、とため息をついた。



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