たった一度のモテ期なら。
3章 モテて嫌われキスされて。

いろいろ仕事を振られて疲れていたのもあったかもしれない。うまくやろうなんて欲を出したのが悪かったのかもしれない。とにかく無駄な動きをして失敗してしまった。

二課の営業事務の木元さんはPCに向き直ってしまい、座ったままで私に背中を向けている。

キーボードを叩きながら、苛立ちを隠さない声で聞かれた。

「それどうしても私じゃないとダメ?」

「営業事務の方に先に知っておいて頂けると助かると思ったんですけど」

他の課でも新しいことをするときは女性の先輩に頼むことが多い。でも機嫌を損ねてしまって、私はフォローの方向性もわからずうろたえている。

「営業の皆さんは外出が多くてお忙しそうなので」

「あー、そう見えるんだ。私だったら暇そうだって?」

まずい、口が滑った。暇そうだなんて思われたら誰だって嫌なのに。

「すみません、そういう意味じゃなくて」

「ごめんね、思われているより忙しいの。こっちは人に頼んで終わりじゃないし」

そう言うと木元さんは席を立って行ってしまった。声を荒げるわけでもないが、完全にお断りされた形だ。

失敗したなぁ。



新しい経費申請システムでは、領収書類はスキャンまたは写真を撮って添付してよいことになる。

紙に貼る作業に比べたらずいぶん楽になると思うけれど、慣れるまでは画像の問題や添付間違いなどいろいろありそう。

ただでさえ処理が遅くなりがちな二課が関係するなら、営業事務の木元さんを巻き込んで味方にしておきたかったのに完全に逆効果。

あ、富樫課長のプロジェクトでって言えばよかったのか。今さら言ったらますます怒らせるかもしれないなぁ、とりあえず出直そう。


ため息をつきつつ一課のほうをチラッと見たけれど、営業の人達はほとんど出払っていた。

西山がいたらちょっとは元気が出るのにな。

……だって、ほら、ラッキージンクスがあるから。

ポケットのチョコを出して自分の口にぽいっと入れる。安っぽくて癒される味がした。



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