あそこにいるのは麻耶か……?

駅まで向かう帰り道、反対側の歩道に彼女の姿を見かけて足を止める。
近くの交差点を渡って、後を追おうと足を一歩踏み出したところで衝撃の光景を目の当たりにした。

――どうして、アイツが一緒に?

麻耶の隣を歩く木下誠吾の横顔を認識して、出した足を引っ込めた。

今夜は会えないと言っていたのは、アイツと会うためだったのか?
俺の誘いをあっさり跳ね除けたのは、アイツとの約束があったからなのか?

馬鹿げた妄想が、頭を渦巻く。

俺に気づかず、楽しそうに談笑しながらいき過ぎる背中を呆然と見送った。

……いや、麻耶がアイツとどうこうなることなど論外だ。きっと、これから如月ミオリも合流して三人で食事でもするのだろう。

そうに違いないと、苦し紛れの自己処理をした。

だが、そう言い聞かせたというのに、俺の足はふたりの背中を追う方を選んだ。
見失わないように、気配を察知されないように、ある程度の距離を保ちながら足を進める。
それ以上、麻耶に近づいたら……ただではおかないぞ。

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