【完】姐さん!!
06 ◇ たまにはすこし息抜きを







授業中で、シンと静まっている廊下。

主に空き教室ばかりで科目別の準備室程度しか出入りされることのない廊下を、ひとりで歩く。



腕の中には、ピーチネクターとブラックコーヒーの缶。

ちなみに、衣沙が『喉乾いた飲み物買ってきて』と連絡してきたから仕方なく授業の隙間休憩に教室を抜け出しただけで。



断じてサボろうとか思ったわけじゃない。

授業の開始時間に間に合わなかっただけ。



ちなみに衣沙が欲したのはピーチネクターで、わたしがブラックコーヒーだ。

……女子よりよっぽど女子じゃないか。



「天気良いわね……」



空き教室についたら部屋の換気でもしよう。



っていうか、なんでわたし、衣沙にパシらされてるの?

ピーチネクターは1階の昇降口横の自販機にしか売ってないから、わざわざそこまで買いに行ったんだけど。地味に距離あるんだけど。




「ねえ、衣沙──」



「粟田先輩のどこがいいんですか!?

衣沙先輩が何しても文句言わないなんて、それって先輩のこと全然なんとも思ってないからですよね!?」



文句でも言ってやろうと思いながら、ガラッと、扉を開けた瞬間。

飛んできたセリフに足を止めたわたしに、言った本人が、おどろいたような顔をした。



ネクタイの色と発言からして、1年生。

本来は霧夏の人間以外の立ち入りを禁止しているはずの空き教室に、見慣れない女の子がひとり。



ふわふわのハニーブラウンの髪に、真っ白な肌。

頬とくちびるは淡い桜色の彼女は、女のわたしから見ても十分なほどに、可愛かった。



「……出直した方が良いの?」



そんな彼女を目の前にしたって、いつもと何ら変わりない衣沙。

怠そうに足を組んで、わたしを「おいで」と呼ぶ。



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