昼休み明け、病棟用の献立表を張り替えに医師休憩室へ寄った。

患者と同じメニューを食べるのは、検食する医師と、あと数名だけ。

だから実際には献立表なんて張る必要はないんだけど、形式上はっておくものらしい。

全く関係ないの研修医室にも同じものがはってある。


「相沢さん」

パッと振り返ったら、立っていたのは脳神経外科の上村先生。

風間先生に負けず劣らずのイケメンと言われている先生だ。

…なるほど、確かに顔立ちは整っている。

外科の病棟を担当していない私には、全く縁のない…話すこと自体が初めての先生だから、顔もマジマジ見たことがなかったのだ。

「お疲れ様です。午前の診察は一区切りしたんですか?」

「ああ、少し休める時間が取れそうだから」

「そうなんですか…お疲れさまでした」

そのまま去ろうとしたら、あ、と声がして再び振り返った。

「…相沢さん、君はどうやって風間先生の心を掴んだの?」

「…え?」

風間先生と同じくらい背の高い上村先生からは見下ろされている状態だ。

「どうやってって…」

どうやっても何もない。

ただ、たまたま利害関係が一致して契約結婚をすることになっただけ。

…なんてそんなことを言えるはずもない。

上村先生は意味ありげにニヤリと笑った。

「…まあいい。馴れ初めはまた今度聞かせてもらおうか。じゃあまた」

仮眠室へ向かうのか、上村先生は欠伸をしながら背を向けて去って行った。