恩返しは溺甘同居で!?~ハプニングにご注意を!!
3. 「今日」はまだ終わらない!?

 
 『足関節内反捻挫』―――全治二週間、という診断だった。

 幸い骨に異常は無かったけれど、捻挫としては酷いほうらしく、処置室から出てきた瀧沢さんは松葉杖を突いていた。

 会計を待つ間、私は職場に連絡を入れ診察結果の報告をし、今後のことの指示を受けた。
 電話越しに千紗子さんから聞いた館長の指示では、瀧沢さんの治療費は図書館の保険から出る、ということ。もちろんタクシー代も出るので瀧沢さんをご自宅に送ったら私はそのままそのタクシーで帰宅して良い、ということだった。

 「―――ということです。瀧沢さん、本当に申し訳ありませんでした。」
 
 私は整形外科での支払いが済んで乗り込んだタクシーの中で、彼にその旨を伝えて再度謝罪した。階段から落ちてきた私に巻き込まれなければこんな怪我を負わずに済んだのに…と申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 「瀧沢さんが乗ってこられたお車はしばらくこちらの駐車場でお預かりするか、それがご心配であればこちらの職員がご自宅までお届けに上がります。」

 タクシーの後部座席で瀧沢さんと並んで座って説明しながら、申し訳ないやら情けないやらで顔を上げられない。それでもきちんと説明することができたのは、電話口で半泣きになっている私を宥め励ましてくれた千紗子さんのおかげである。
 
 そんな私の話を、彼は私とは反対の窓の方に頬杖を突きながら黙って聞いていた。
 
 
 怪我をさせられて怒っているんだ……
 
 今朝はあんなに優しく微笑んでくれた彼が、私の方を見ようともせずに黙っている姿が目の端に映って、無性に悲しくなった。

 「謝って済むことではありませんが、本当に申し訳ありませ・・」

 「そんなに謝らなくても大丈夫。」

 私がすべての言葉を言い終える前に瀧沢さんはそう言った。その声は朝聞いた時よりも少し低めで、私の方を見ようとはしない態度に、私は思わず顔を上げた。

 
 「――-でも」

 私が言葉を続けようとした時、タクシーが停車し目的地に着いたことが分かった。

 
< 15 / 283 >

この作品をシェア

pagetop