××夫婦、溺愛のなれそめ
外車に乗った王子さま

住むところも仕事も恋も、何もかも失った私の前に、ひとりの男性が現れた。

明るく黄色がかった髪に、緑色の縁をしたヘーゼルの瞳。

白皙の皮膚に包まれた大きな手を差し出す彼は、ダークブラウンのスーツを纏っていた。

「行きましょう。僕はあなたを迎えに来ました」

そう微笑む顔には、私と同等かそれ以上の諦念と悲壮さが漂っているように思えた。

その表情に惹かれ、私はそっと、自らの手を男性に差し出す。

まるで王子様のような彼に導かれた先にあったのは、白馬でもかぼちゃの馬車でもなく、白い外車。

それに乗り込んだ時から、私の運命は変わり始めた。



連れていって、どこか遠くへ。

忘れさせて、惨めな私を──。


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