社長は今日も私にだけ意地悪。
2.
何が何やら、どうなっているのか。


「全く、意味が分からねーな」

そう言って私の隣を歩くのは、相変わらず迷惑そうか顔をし続ける佐藤さんだ。


本来ならば、数ヶ月間は教育係である佐藤さんの業務に一緒につく予定だった私。
けれど一時間半前に突然社長から放たれた一言により、入社初日である今日から担当アーティストにつくことになってしまった。

人事の都合でやむを得ずそうなったのかと思いきや、社長によると「俺がさっき決めた」とのこと……。

一体どういうこと? 社長は理由までは話してくれず、用件だけ伝えると足早に営業部室を出て行ってしまった。


しかし、社長命令となれば誰も逆らえない。
社長の命に従う為、私はこれから九階にある打ち合わせ室で、担当アーティストと初対面する。
とは言え、入社したしたばかりで右も左も分からない為、教育係の佐藤さんにもついてきてもらう。


「初日から担当につくなんて聞いたことねーよ。まあ、俺の仕事にべったりくっつかれなくていいんだから、俺は楽だけどよ」

「そんなこと言わないでください。私、本当に何も分からないんです。
担当するアーティストのことも、事前に調べる時間がほとんどありませんでした。男性四人組の新人バンドということしか……」

「数年前から路上バンドをやっていたところを、うちの事務所が先月スカウトしたんだ。まあ、大物アーティストじゃなくて新人でまだ良かったじゃねーか」

「良くないです。私のせいでその人達の将来性を台無しになるかもしれないんですよ」
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