フッ……とまだ春とは言えない朝の冷たい風が吹く。

「さむぅ…………うぅぅやっぱりまだカーディガンは必要かな。」

もぞもぞと布団から出る。
憂鬱な月曜日。昨日のことで余計に。

あ、ペンダント付けなきゃ…
またあんな目に合う。

……夢であってほしい。

ペンダントを付けて、冷たいワイシャツに袖を通す。

「あれ、んー、どこやったかな。」
カーディガンが見つからない。

おかしいな……たしかここに直したのに。

「おばーちゃーーーーん!!ここに直したボルドーカラーのカーディガン知らないぃーー?!」
2階から叫ぶ。

「それなら洗濯に出したわよーーっ!!」

えぇ
勘弁してくれ。

どうしよう、今カーディガンあれしかないのに……。

「しょうがない…寒いけど我慢しよう。」

肩を震わせて1階の食卓に降りる。
机には暖かく美味しそうな朝ごはんが用意されていた。

「朱、おはよう。悪いんだけど、尚くん。起こしてきて!」
「えぇ!?な、尚くん……!?」
「何?まずいことでもあるの?」

や、ない。まずいことなんてない。
でも。
会いにくい……。

必死に目で訴える。
「なぁにその目。早くお願いね!」

……分かるわけないか。

重い足取りで2階へ向かう。

コンコン、と2回ドアをノックする。
……
………
…………。
返事がない。

「し、失礼しま〜す……」
自分の家なのに挨拶。
情けなくなってきた。

「な……尚くん!尚くん……!!起きてください!」
こんもりとした掛け布団を揺する。
だけど尚くんは起きる所かピクリともしない。

「尚くん!!なーおーくーんー!!!!」
耳元で叫ぶ。

これで起きなかったらどうしよう
そんな事を考えていると、

グイッ
と腕を掴まれて布団に引き込まれた。

「う!?ぁぁあわわわっっっ!!!!」
バランスを崩し、ベッドに倒れ込む。

「あたた……」
「うわぁ朱、朝から大胆だね…?」

顔をばっと上げるとニヤリと綺麗に口角を上げた尚くんが私を見ていた。

「なっっ……尚くんが引っ張って……!!」
「んー…でも、俺の肩しっかり握ってるのは朱だよ?」
そう言われて自分の手を見ると、尚くんの肩をぎゅうっと握る自分の手があった。

一気に顔が赤くなるのを感じて、ばっと手を離す。
「あははは……そんなに焦らなくても……!!あはっあははっ…………かわいい!」
爆笑しながら、頭を撫でられ泣きそうになる。

「もうもうもうっっ!ほんっとにぃぃ……うぅぅ……」
あまりの恥ずかしさに言葉が出て来ない。

「もう遅刻しても知りませんから!!」
「まってまって!ごめんって。余りにも反応が可愛かったから…俺のブレスレット付けてくれてたのも嬉しかったし。だから……ね?怒んないで?」

そう言って私の頭に顎を乗せて抱きしめる。

ドキドキしていたら
「ぅぅぅ……くしゅっっ!!!!」
と、情けないくしゃみが出た。

「あれ、こんなに寒いのにカーディガン着ないの?」
「な、なかったんです。洗濯に出しちゃって……」

そう言うと、尚くんはクローゼットをゴソゴソと探り始めた。
「あったあった。ん。」

そう言って紺色のベストを取り出した。
「これ、俺がもうサイズはいらないやつ。
朱にはちょっとでかいかもだけど無いよかましでしょ。」
私の頭からずぼっと被せながら言う。

フワッと抱きしめられた時と同じ、尚くんの匂いがした。
甘いような、でもどこか色気がある。そんな匂い。
「そんなに匂わないでよ…俺の匂い好きなの?」
「に、匂ってないです。……でもありがとう……。」

図星で焦る。
少し仮を作るみたいで不本意だけど、お礼を言う。

「……たまんないね。」
ニコッと尚くんが笑う。
でもどこか意地悪で優しくて、胸がキュッとなる。

「尚くんは……ずるいです。」
そう聞こえるか聞こえないかの声で話す。

「ねぇ、それってどういう……」
「朱ー?ご飯冷めるわよーーっっ!!」

突然のおばぁちゃんの声に2人ともハッとする。
「じゃ、じゃあ私、先に学校向かうんで!!」

急いで部屋を出る。
収まらない動機とまだ残ってる腕の微熱に溶けてしまいそう。

「朱?ご飯は?」
「ごめん、おばぁちゃん。今食欲無い。」
ローファーを履いて玄関を飛び出す。

「絶対好きなんかじゃないっ……」

私は自分に言い聞かせてバス停に向かった。

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