真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ～

真夏の夕暮れ時は長く、オフィスの窓一面に赤々と燃える太陽が高層ビルの隙間から地平線に足を着き、街の景色をいつまでも橙一色に染め上げていた。

しかし、次に俺が窓の外に目を向けた時には太陽の姿は見る影もなく。まるで世界が変わったように空は灰色に塗り替えられていて、主役であるはずの月は雲に隠れて煌々とどよめく都会のネオンに尻込みしていた。

俺はそんな景色が侘しく思えて、視線を再びパソコンへ戻した。

だけど、そこには短絡的な数字の配列ばかりが並び、余計に虚しさを覚えた。

そして、そんな時無性に彼女の屈託のない透明な笑顔と柔らかい声に会いたくなった......。

時計を見れば午後８時半ーー。

彼女は今どこにいるのだろう？

何をしているのだろう？

今日はどんな一日だったのだろう？


君の。その柔らかな声で、俺に話してくれないか？

もし、君が俺に会いたいと思ってくれているのなら、今すぐ会いに行くからーー。


窓の外を眺めても、パソコンに目を落としても、思い浮かぶのは彼女のことばかり......。

時計の秒針が午後９時を指した時、俺は鳴らないスマホを片手にオフィスを後にした。