真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~

「熱いキス」

命短し、恋せよ乙女。

でも。私、永遠に広務さんと一緒にいたいの。

でも。どうしても、死んでしまうって言うのなら、成瀬家のお墓に入れて。

ーーラブラブな妄想も、そろそろ末期。

永かった。

この三日間が永遠に続くのかと思った。

そして、ようやく迎えた彼とのデートの日。

案の定、前日はまるで眠れなかった......。

寝不足は、お肌の大敵。

砂漠のようなアラサーの肌にフェイスパックをして、これでもかというほど水分を与える。

そして、いつもの朝はめんどくさくてつい省略してしまう、導入液と美容液の2品使いで、寝不足の肌を救済する。

少しはマシになったところで、今度は入念にメイクをして、自分史上最高に可愛い私で広務さんに会いに行く。

とりあえず、顔は及第点に至った。後は体だ。

いつも着けている盛りブラを封印して、今日は浴衣用の下着をつけた。

夏の風物詩といえば花火と浴衣。

今日のデートのために買った新作の浴衣は、淡い紫の生地に朝顔の花があしらわれた大人っぽくて上品なもの。

この浴衣を選んだ最大のポイントは、30代の広務さんに褒めてもらえるような大人可愛いデザインだと思ったから。

本質が、”じゃりんこ”のような私でも。ひとたび、この浴衣に身を包めば広務さんのような大人の男も、きっとイチコロ......。

不敵な笑みを浮かべながら、キュッと浴衣の帯を締めて、スッと巾着を持った私はそそくさと部屋を出た。

最寄駅までは徒歩8分。

下駄を鳴らして都会の道を歩くのも、なかなか風流だ。


待ち合わせの時間は10時。気合いが入って、早々に駅に着いた私は到着する電車を何本か見送った。

電車を見送る度に、次の電車には広務さんが乗っているんじゃないかと思い、胸がドキドキした。

そんな胸のドキドキにも慣れた頃、9時53分。一本の電車が停まった。

10時までに到着する電車は、これで最後。

この電車に必ず広務さんは乗っているーー。

早くも。今日、最高潮の胸の高鳴り.......。

私は急いで手鏡を取り出し、最後の身だしなみチェックをした。

笑顔の準備もOK.

広務さん、どこーー??

そう思っている間に、電車は行ってしまった。

そして、その電車から彼は降りてこなかった......。

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