私のバイト先であるカフェに座るスーツ姿のイケメン。

私のフィアンセだ。

いつもと変わらない風景が其処にはある。

だが今日だけは一つ違う事が起こる。


「雨宮さん、慈英くんのコーヒー。」

「はい。」


大きく深呼吸をする。


「朝から頑張ってたね。」

「店長、キッチンをありがとうございます。」

「俺も慈英くんの喜ぶ顔が見たいから。」


店長は昔から岬家とは知り合いだったらしい。

だから慈英の事も知っていたらしく、私を狙う慈英を面白がっていたようだ。

お盆にコーヒーと小さな箱を乗せた。


「ごゆっくり、雨宮さん。」


店長の言葉に慈英のテーブルに向かう。


「お待たせしました。」


いつもと変わらない言葉を掛けた。

慈英の視線がコーヒーから小さな箱に向けられる。


「座ってもいい?」


明らかに慈英が私の行動を怪しんでいるのが伝わる。

慈英も『チョコは貰えるだろう』と予想している。

慈英の前にコーヒーと小さな箱を置いた。


「これ、開けてもいい?」

「うん。」


慈英が小さな箱に手を伸ばしてリボンを解く。

中は予想通りのチョコだ。


「心菜の手作り?食べてもいい?」

「うん。」


満面の笑みでチョコを一つ口へ運んぶ姿をドキドキしながら見つめる。


「美味しい、心菜。」

「よかった。」


嬉しそうな慈英の姿にほっとした。


「本命だから。」

「うん、心菜、嬉しい。あれ?」


上蓋をテーブルに置いて気づいたみたいだ。


「これ、何?」

「ん?」

「なんか貼り付けてあるよ、心菜。」

「うん。」


平静を装いながら返事をする。

慈英が貼り付けられた紙を剥がして内容を確認していく。

固まる慈英の視線だけが私に向けられる。


「ミサキ商事?」

「うん。」

「就職は別の会社だって。」

「内緒にしてもらってたの。」


そう。

私は四月からミサキ商事で働く事になっている。

慈英には内緒にしていたが、同じ会社で働く事にしたのだ。


「慈英、これから先もずっと宜しくお願いします。」

「…………。」

「部下として、フィアンセとして。」

「…………心菜。」

「大好きだよ、慈英。」


恋は盲目。

彼は私に話した事がある。

今の私だ。

彼の新たな一面を見てみたいと思ったのだ。

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