不器用な殉愛
歓迎されない花嫁
 こうして、戦は終了した。

 ルディガーとディアヌの婚姻については五日後と定められた。シュールリトン王族の持っていた財宝はすべてルディガーが接収し、国内の治安維持に使うと定められた。

「あなたの持ち物はこれだけですか」

「ええ……修道院で育ちましたし、こちらに来てからも、宴の場に呼ばれるようなことはありませんでしたから。トレドリオ王妃だった頃に母が持っていた宝石もあるはずなのですが……父に処分されたのかもしれません」

 ディアヌの部屋を訪れたノエルは、興味深そうにあたりを見回している。あの日、王太子であるジュールが破った扉は、今は他の部屋の扉と取り替えられ、誰も室内に入れないようにされている。

 この部屋に置かれている家具は、いずれも上質のものではあるが、華美な装飾はすべて取り外されていた。

 部屋には花の一輪すら飾られているわけでもなく、若い娘の部屋と言うにはあまりにも殺風景な光景が広がっていた。

「では、これは本当にいただいてもかまいませんか」

「どうぞ、使ってください。私には必要ないものなので……この指輪さえ残していただければそれでかまいません」

 左手のひらに乗せたのは、母の形見である指輪。これは、修道院に送られた時、守り袋に入れて持たされたものだった。

 望まずに生んだ娘であっても、少しは気にかけてくれたのだろう、と思っている。

 ——自分は、生まれた時から呪われているのだから、せめて、他人に迷惑をかけない生き方をしなければ。
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