守りたい人【完】(番外編完)
「おい、大丈夫か」
無意識に下を向いていた私の顔を、朝比奈さんが訝し気に覗き込んできた。
その真っ直ぐに向けられる視線が、寂しさに震える心を追い込んでいく。
「おい、立てるか」
それでも、何も言わない私に呆れたのか、朝比奈さんがゆっくりと私の腕を取って立ち上がろうとする。
その瞬間、彼のぬくもりが消えて一気に寂しさが襲った。
どうして、こんな時に限って優しくするの。
いつもみたいに放っておいてくれればいいのに。
訳の分からない感情が一気に爆発して、頭の中がグチャグチャになる。
―――だから、その後の事は無意識だったと思う。
「――っ」
グイッと目の前の朝比奈さんの腕を引いて、迎えるように唇を寄せる。
感じるのは、温かくて柔らかい唇。
驚いたように目を見開いて、固まる朝比奈さん。
――…だけど、熱い息と共に唇を離した瞬間。
私の意識は真っ黒に塗り潰された。