ひょっとして…から始まる恋は
ひょっとして……
『それは恋ね』


テレビの画面から聞こえた言葉にポトンと箸を落っことした。


「何やってるの」


母が拾い上げて水道で洗い、綺麗にしてから戻してくる。


「ごめん、ありがとう」


そう言うと箸を二本揃えて握り直し、目の前にある料理に向かおうとするのだが__。


「柚季?」


母は不思議そうに顔を覗き込み、食べないの?と聞いてきた。


「あ…食べる、食べる」


そう返事して座り直し、少し冷めてしまった料理に箸を付けだした。


「そう言えばさっき兄さんから電話があったよ」


ビールを飲んでいる父が急に言いだし、ぎくっとして視線をそちらに向ける。


「今日大学の方に柚季の同級生がやって来たって」


あちゃー、やっぱり。


頭の中でそう思い、おじさんのお喋り、と非難したくなってくる。


「前に勤めていた会社の人だと言ってたぞ。自分の研究に役立つ商品のセールスに来てくれたんだって」


そうなのか?と訊ねる父に、うん…と目を伏せたまま返事。


「なかなか面白いことを言う奴だったと笑ってたな。柚季ちゃんも隅に置けないとさ」


< 141 / 190 >

この作品をシェア

pagetop