ひょっとして…から始まる恋は
「あっ…！」


ハンカチを取り出した途端、内ポケットに入れておいたスマホが飛び出し、地面の上に転がった。

雨粒に降られるスマホを見つめ、あーもう駄目だ…とガックリと肩を落としたけれど、それを拾い上げてくれた彼が、良かったね…と微笑んでいる。


「何処も壊れてないみたいだよ」


ハードケースに入れてたせいかな、と言いながら手渡してくれて、私はそれを受け取りながら、彼の指先の爪を確認した。



「あ…ありがとう……藤田君」


四角くて健康そうな爪の色を見ながら、綺麗に手入れされているな…と感じた。


「本当に酷い振りだよね。朝の天気予報でもこれだけ振るって言ってたっけ」


歩道の方へ向きを変えた彼が空を睨みながら呟く。
私はそれにさあ…と答えながらハンカチで顔や肩を拭いていた。


「保科さん、髪も濡れてるよ」


貸して、とハンカチを取り上げられ、頭の上から下に向かって拭いてくれる。


「い、いいよ、自分で…」


手を伸ばそうとするが、いいから…と言われてしまい、そのまま大人しく拭かれることになった。


< 33 / 190 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop