ひょっとして…から始まる恋は
三波さんや松下さんはそれを聞いて吹き出し、あり得そうだと言って笑った。


「柚季ちゃんはそんなに記憶力が悪かったのか?」


叔父は私に訊ね、ううん、そうじゃない…と弁解をしようとしたが、すれば私が藤田君にずっと片思いをしていたことがバレると思い、何も言えずに唇を噛んだ。


「そうか。まあそういう抜けた部分もないとな」


叔父はそう言うと自分の名刺を久保田君に手渡した。
「保科和晃」と印字された紙を見て、ようやく叔父だと気づいたらしい久保田君は……


「ひょっとしてと思うけど……叔父さん?」


こそっと耳打ちしてくるものだから心臓が跳ねる。
彼の息が耳朶にかかり、ドキン!と大きく揺れ動いた。


「そ、そう」


顔が赤くなってないかな。
こんなことくらいで一々ドキドキするなんて知られたくないよ。


「それならそうと早く言ってくれよ」


困った様な顔つきに変わり、久保田君は失礼致しましたと詫びている。

叔父はまあまあと彼を宥め、二人が談笑を始めたところへ他の先生達も集まってきた。


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