触れ合うだけの優しいキス。

それだけで凱莉さんの気持ちが伝わってくるような……。

「っ……んんっ……」

優しくないっ。

ぜんっぜん優しくないっ。

まるでこの先に何かが待ち受けているかのような、艶かしくて深いキスだ。

片手で凱莉さんの腕をパンパンと叩いてみるけれど、凱莉さんは全く反応してくれない。

私の口内を乱していく凱莉さんの舌は、身体を熱くするには十分だった。

「ん……はっ」

ようやく解放してくれた唇の隙間から銀糸が引く。

「会社で何させるんだよ」

あろうことか凱莉さんがそんなことを言ってのけるものだから、私は一瞬きょとんと固まってしまった。

「いやいや、凱莉さんが強引にキスするからっ」

我に返ってそう言い返すと。

「こんな所に連れ込んで上目遣いとか、こうなって仕方ないだろ」

開き直ったかのような凱莉さんには、きっと何を言っても無駄だろう。

無節操になるほど愛されてる、ってことなんだろうな。

そう思えば文句の一つも出なくなる。

凱莉さんの行動の根源は、全て愛情なのだと知っているから。

「千尋は何も考えずに俺をここに連れてきたんだろうが、外にいる奴らはどう思ってるんだろうな」

「え?」

「婚約発表した2人が二人っきりでここに入っていって。俺は全然構わないが千尋はどんな顔して出るんだ?」

凱莉さんにそう問われて、私はサァッと血の気が引いた。

この状況って……ものすごく恥ずかしいんじゃないの?