コーヒーを入れて戻って来た桐谷からカップを受け取った。

そして桐谷は1人がけの方のソファに座り、黙ったままコーヒーを飲んでいる。


「もしかして……萌奈、俺が千歌ちゃんからキスされたの見てた?」


思わずコーヒーを吹き出しそうになって、慌てて手で口を覆った。


「やっぱり……。給湯室に俺のカップ置きっ放しになってたの見たから、まさかとは思ったけど。でも、萌奈何も聞いてこないし、だったらわざわざ言うのも誤解を招くし」


「誤解?」


「浮気だと思われたら困るから。そんなことあり得ないのに」


キッパリと浮気を否定されて、息が止まりそうになった。


「千歌ちゃんのこと……拒否、しなかったじゃない」


あの時、桐谷の手は千歌ちゃんを拒まなかった。

受け入れたってことでしょう?


「ちゃんと見てたのかよ」


桐谷の言葉に愕然とした。

何を言うんだろうこの人は!

誰が好き好んで恋人と他の子がキスしているところをちゃんと見たいと思うの?


「な、なにを……、見れるわけないじゃない。見たくもなかった」


あの瞬間を思い出して、胸が苦しくなってきた。


思い出したくないのに思い出させる桐谷は酷いヒトだ。


苦しくて、胸が痛くて、手先が冷たくなって震えてきた。


カップを持っていられずサイドテーブルに置いて、両手をギュッと握りしめた。









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