Perverse

episode 7

「三崎さん、一緒に帰らない?」



ある日の退社時、津田さんが私に声をかけてきた。



確かに今から帰ろうと思っていたけれど。



ちらりと隣を見ると柴垣くんはまだ終わりそうにない。



「この前のこと、やっぱりちゃんと聞いときたいからさ」



津田さんが顔を寄せて小さな声で耳打ちする。



それで竹下さんとのことを言っているとわかった。



迷惑もかけたし場所まで提供してもらったにも関わらず、無事に解決したとだけしか伝えられていない。



「はい。すぐ用意しますね」



笑顔でそう言うと、デスクを素早く片付けた。



みんなに挨拶をしてフロアを出たけれど、柴垣くんは挨拶を返してくれなかったような気がした。



集中していれば多々あることだし気にしなければいいのだけど。



エレベーターへ向かう途中、



「あ、忘れ物だ。ごめん、先に降りててくれる?」



ポケットに手を入れて津田さんがそう言うものだから、私は素直に返事をしてエレベーターに乗り込んだ。



ロビーで津田さんを待っていると、案外早くに降りてきた。



「ごめんね、お待たせ。行こうか」



「早かったですね」



「うん。すぐそこにあったからね」



爽やかな津田さんの笑顔をちゃんと見るのは久しぶりで、あんな事があったけれど私達はいい距離感を保てているだろう。
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