副社長の一目惚れフィアンセ
脱衣所に用意されていたワンピースを身に纏ったけど、もう顔も髪型も、パーティーに戻れるような状態じゃない。

部屋にナオはおらず、テーブルに書き置きがのこされていた。

『挨拶回りだけ終わらせてくる。すぐ戻るから休んでて』

申し訳ない。本来なら私が隣にいなければならないのに。

そのためのパーティーなのに。

シンデレラの魔法は、思いもよらない形で途中でとけてしまった。


ベッドに倒れ込み、ただひたすら猛省していたら、ドアの開く音がした。

さっきまでの服装のまま早足で歩いてきたナオは、固い表情をしている。

「…ナオ…」

起き上がると、ナオはベッドの端に座って私を抱きしめた。

「…悪かった。あんな事態になるとは予想していなかった」

「ナオが謝ることない。ごめんなさい。
私が挨拶すらろくにできないから…あんな場で転んで失態を犯したから…
全部、私のせいです。ごめんなさい。ナオにも迷惑をかけてしまって…」

「そんな言い方をするな。莉乃さんが悪いんだ。君は悪くない」

「…莉乃さんは、取引先の偉い方の娘さんなの?」

「いや、父さんの旧友で資産家の令嬢なんだ」

資産家…どれだけのお金持ちなんだろう。

実家がボロアパートの私とは天と地の差。



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