溺愛ラブ・マリッジ~冷徹上司が豹変しました~
プロローグ 誰かの代わりの結婚式
鏡に映る自分を見ると、不思議な気分になってくる。

「なにやってるんだろ、私」

真っ白のドレスにきれいに結い上げられた髪、それに長いベールをつけた自分はどこか、現実味がない。

あの人は本当に私でよかったんだろうか。
あの日のナチュラルハイのせいだと後悔したりしないんだろうか。

それに私だって、あの人のことをよく知らない。
会社ではいつも冷静沈着で、笑った顔など見たことない。
結婚するような相手がいたと知ったのもつい一週間前のことだ。

――つい、一週間前。

そうなのだ、あの人との結婚を決めたのはつい一週間前のこと。
それまで私たちは上司と部下としてしか接点はなかった。
なのになんで、結婚する羽目になってしまったんだろう。

「和奏(わかな)」

振り返るとブラックのフロックコートを着たあの人が無表情に立っていた。
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