恋にはならないわたしたち
恋にして。


『瑞穂ちゃん』



自分の知らない男が知り合って間もないというのに名前で呼んだことに心がザワついた。


笑顔で応える瑞穂に腹が立つ。



オトコマエと同期の中でも噂される瑞穂は実は密かに人気がある。

スラリとした立ち姿、スーツの袖口から覗く細い手首、シャツの胸元から僅かに見える肌は白い。

一重瞼だけれど切れ長の綺麗な瞳。






ジジイと親父にボチボチ結婚したらどうだと見合い写真を渡されたとき、浮かんだ顔は瑞穂の涼しげな優しい笑顔だった。



友達、同期、気の置けない仲間。


媚びない瑞穂をもうずっと知らず知らず好ましく思っていたのだ。


明らかに飲みすぎている瑞穂は、それでも責任感から友人の結婚式の二次会幹事を危なげなくこなしていた。


心配で瑞穂の姿をチラチラと目の端に捉えながら、寄ってくる女子をテキトーに躱していた。


会の終わり、涌井とかいう男の前でふらついた瑞穂の腕を引き、自分の胸に抱き寄せる。
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