「何で俺はクリスマスに出張なんだよ?」
もう何度目かわからないこのセリフ。
検印してもらった指示書を受け取りながら私は苦笑する。ちらりと盗み見た上司はとても不機嫌だ。

桔梗さんが私の彼氏になって十日経った。
桔梗さんは多忙だ。朝も私より早い。取引先に直接向かう日もあるし、帰りも遅い。皆川さんに一番最初に言われていたように、出張が随分多い。そんな毎日はきっと疲れているはずなのに、それでも飄々とした様子で検印や事務をこなしている桔梗さんは本当にタフだと思う。
恐らくは純粋に仕事が好きなのか楽しんでいるのだと思うけれど。
私は心配事や来客が立て続けになると焦ってしまったり、緊張してしまうのだけど、桔梗さんは真逆で物凄く前向きに事象を捉える。桔梗さんに「大丈夫」と言われると本当に何とかなる、と思えるのだ。一見、適当に見える人だけれど、本当に上司としてすごい人だな、と思う。自分が多忙な中でもきちんと自分の部下の仕事を把握して、メンタルにも気付いている。
私が知っていたのは勤務中の桔梗さんだけだった。
“彼氏”になったら“桔梗尚樹”という人は変わるのかな、と心配していたけれど最低限の礼儀がなくなること、何もかも任せっきりになることも、いい加減な人に変わることもなかった。

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