オートクチュールドレス専門店Valerieは、少し辺鄙なところにある。

 もともと藤崎家の自宅だったのを改築して作られており、木のぬくもりを感じる建物で一階が全てガラス張りになってドレスを着たドールが見えている。

 Valerieでは、今日も穏やかな時間が流れていた。

「あー暇ね」
「うん……暇だね」

 自社ホームページやSNSのメッセージを開いても、お客様からの依頼は一件も来ていない。

 最近オーダーを受けたのっていつだっけ? と思い返してみて、ああ、二ヵ月前だ、と思い出してマズいなと我に返る。

「晴樹、どこかに結婚が決まりそうな女友達いないの?」
「そんな女いねーよ。直樹はいねーのかよ?」
「いるわけないでしょ……うちの周りの女はみーんなキャリアウーマン、よ。結婚なんてまだまだみたいな女子ばっか」

 兄二人が来客用のソファに座りながら優雅にお茶をしている様子をしらーっとデスクから見つめているのは、妹である私。