溺愛本能 オオカミ御曹司の独占欲には抗えない
8、”触るな、危険” ー 遥side
「は……遥」

寿司屋の帰りのタクシーの中、名前を呼ばれて楓の方を向く。

「ん?って、お前寝るなよ。もうすぐ着くぞ」

幸せな顔をして今にも寝そうな彼女。

今日のエステ効果なのか、ずっと消えなかった目の下の隈はもうないし、血色も良くなった気がする。

その彼女の口から言葉が紡がれた。

「……ご馳走さま」

別に愛してるとも、好きだとも言われたわけでもない。

なのに、愛おしいと思ってしまうのは何故だろう?

つい触れて抱き締めたくなる。

もう彼女が目を開ける様子はない。

起こそうかとも思ったが、気持ちよさそうな顔をしているので寝かせておくことにした。

「ったく、仕方がないな」

楓の身体を抱き寄せて俺の膝の上に寝かせるが、もう力は抜けていて何の抵抗もしない。

最近はこいつの寝顔ばかり見ている気がする。
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