【超短編 24】 地球に大きな穴を掘ろう
地球に大きな穴を掘ろう
今日はとても目覚めの良い朝だった。
 11月16日。
 別に特別な日のわけでもない。ただいつもと違うとするならば、それは今日の朝は目覚めがとても良い朝だったということだ。

(どうして、今日はこんなに目覚めがいいんだろう)

 考えてみたけれどもちろん理由なんて出てくるはずもなかった。無理やりその理由を挙げればきりがないし、逆にそれを否定するのも簡単だからといった方が適切だ。

その理由1 昨日の夕飯のおかずが、私の好きな野菜コロッケだったこと。
その理由2 昨日の彼氏とのセックスで、久しぶりにイッたこと。
その理由3 昨日の5時限目の古文が休講だったこと。
その理由4 昨日は、化粧のノリが良かったこと。
その理由5 昨日も今日も晴れていたこと。
その理由6 昨日は、行きも帰りも電車で座れたこと。
その理由7 今日が土曜日だということ。

だけどその理由1~7が今日目覚めが良かった理由になるという証拠は、どこにもない。
 私は朝食を済ませ車に乗りこんだ。
 最近の私の趣味は一人でドライブをすることで、お気に入りのアルバムを聞きながら何も考えないでハンドルを切っていくのが休みの日の日課だった。
 家から出てしばらくは国道や町の中をただひたすら走っているが、そのうち大きな川のある土手やだだっ広い畑や大きな山に出会う。
 そんな時私はスピーカーのボリュームを上げてその景色を楽しむのだ。もちろん毎回そんなことがあるわけじゃなく、何も見つからないで帰ることのほうが多い。それは帰るために(そして素敵な景色に出会えた時の感動のために)制限時間を決めているからだ。
 
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