「……ということなんですけどぉ、上條専務ぅ」

グランフロントの近くのヒルトンプラザイーストにある中国料理店に、部下たちを連れてきていた。

横浜の中華街に本店のある老舗の店だ。

中華街の本店は競争が激しいからコスパがいいのに、ここ大阪ではえらい強気な価格設定だな。


豊川は、ずいぶん仕事で鬱憤が溜まっているみたいだった。

秘書の伊東と出先からオフィスに戻った時、定時でとっとと帰った三人の先輩たちの分まで、豊川は仕事をしていた。

その時、生気の抜けた顔をしていたので、今日は木曜日で明日も仕事だが「奢ってやる。美味いもの食いに行こう」と伊東も誘って、ここに来たのである。


初めは「わたし、下のジュンク堂までしか来たことないんですよ〜!」と豊川のテンションはやたら高かったのだが。

いや、コース料理を食べ終えて「仕事でなにか困ったことはないか」と訊くまでは「美味しいですっ。中華ってこんなに繊細でお上品なお料理やったんですねぇ〜」とご機嫌だったのだ。


伊東も豊川も、今春大学を卒業してあさひ証券に入社した一人息子の大地(だいち)とそんなに年齢が変わらないから、おれにとっては子どものような世代だ。

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