それから十日ほど経った、遅番勤務の水曜日。
私はランチタイムをとうに過ぎた時間に、一人で休憩に入った。
付近のビルのレストランは、アフタヌーンティータイムに入っている。
サラダボウルと紅茶をオーダーして、離れていく店員さんの背を見送ると、私はぼんやりとテーブルに頬杖をついた。


勤務先の隣のビル、十階にあるティールームの窓からは、オフィス街の眺望が楽しめる。
六月初旬を迎えたこの季節、天気がよければ屋外のテラス席も気持ちがいいけれど、今日はあいにくの空模様。
少し厚い雲がかかっていて、景色もどんよりとグレーがかって見える。


夜、帰る頃には雨が降ってくるかもしれない。
奏介、傘持って出たかな……と考えながら、私はオフィスから持参した旅行のパンフレットを数冊取り出し、テーブルに広げた。


奏介とは、海外どころか、温泉や日帰り旅行もまだしたことがない。
この新婚旅行が、奏介との記念すべき初旅行になる。


彼には、『どこに行きたい?』と逆に問い返されてしまったけれど、私が希望した『二人っきりで、過ごせるところ』には同意してくれた。
だから私は、毎夜、奏介の遅い帰宅を待ちながらパンフレットを熟読して、いくつか行きたい場所をセレクトしていた。