外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
愛に満ちた新婚生活の始まり
上告審初日が無事に終わり、被告側担当者や報道陣への対応を終えた奏介は、私を周防家に送り届けてくれた。
私は、彼にお礼を言って見送ろうとした。
ところが。


『牧野が捕まった今となっては、もう七瀬を実家に置いておく理由はない』


奏介はそう言って、さっさと私の荷物を纏めると、お義父さんたちに挨拶を済ませ、すぐにマンションに帰ってきてしまった。


なんだか、朝からバタバタの一日――。
ほぼ一月ぶりに家に帰ってこれたのに、感慨に浸る余裕もない。


先にお風呂を使わせてもらい、入れ替わりで入った奏介が出てくるのを待って、私はリビングのソファに丸まった。
全身から力が抜け落ち、ソファに吸い込まれていくような、そんな感覚。
閉じた瞼も重くて、もはや自力で持ち上げることができない。
意識に重い靄がかかり、すーっと吸い込まれていくまで、そう時間はかからなかった。


眠りに落ちていたのはどのくらいの時間だったのか。
わずかにソファが軋む感覚にハッとして、目を開けた。
肘を突いて上体を浮かせると、


「悪い。起こしたか」


頭上から、低く耳に心地いい声が降ってくる。
< 211 / 226 >

この作品をシェア

pagetop