週が明けて月曜日。午前十時。
この時間は、本格的なオフィスアワーに突入して、ビルの総合エントランスを訪れる来客が増える。


「お待たせいたしました。こちら、入館タグです。館内では胸元わかりやすい位置に着けていただけますでしょうか」


入館受付票の記載確認を終えた後、私はカウンターの向こうに立つお客様にバッジを差し出した。


「十階になりますので、左手手前のエレベーターでお上がりください」


手続きを終えて頭を下げると、キリッとしたスーツ姿の男性四人組が、「ありがとう」と言って、エレベーターホールに進んでいった。


「行ってらっしゃいませ」


お客様を見送ってから、私は無意識に肩を動かし、「ふうっ」と息を吐いた。
受付待ちのお客様はいない。
どうやら、ようやく混雑のピークを終えたようだ。


「な~な~せっ」


隣に立つ同僚の宮村(みやむら)なつみが、私の接客が終わるのを待ち構えていたように、間延びした声で呼びかけてきた。


「なに?」


先ほどのお客様に記入してもらった受付票の処理をしてから、彼女に首を傾げてみせる。


「この週末は、やっと旦那様と『新婚生活』始められたんでしょ~? お昼に聞かせて。一緒にランチ行こうよ」


ちょっと客足が途絶えたのを見計らって、なつみは声を潜めて探ってくる。