外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「あ~……うん」


辺りを憚って目を泳がせて、口ごもった。
無意識に左手薬指を摩る。
入籍したその日にお互いの指に嵌めっこしたマリッジリングが、なぜだか自分の目にも眩しかった。


それから一時間半ほどで、私たちはお昼休憩に入った。
なつみに誘われるがまま、勤務先の隣のビルの商業フロアにある和食レストランに足を運ぶ。
お互いランチセットをオーダーした後……。


「七瀬! 三日連続で初夜が流れたって、どうして!?」


なつみが目を剥き、ひっくり返った声で食いついてきた。


「ちょっ……声が大きい!」


その声量のせいで、周りのテーブルからもビシバシと視線が向けられる。
私は慌てて腰を浮かせてなつみを止めた。
彼女もハッと口を手で覆い、「ごめん」と肩を竦める。
それを見て、私はホッとして椅子に座り直した。


「でも、どうして。旦那様の裁判、無事に終わったんじゃないの?」


なつみも意識して声を低め、少し前屈みになって窺ってくる。


「まあ、いろいろ……本当にいろいろあってね」


私はおしぼりで手を拭きながら、歯切れ悪く返す。


そう……。
土曜日は疲労困憊の私が眠ってしまい、気付いたら朝だった。
昨夜は奏介に事務所から緊急の呼び出しがあり、彼は急遽出勤になってしまい、そのまま帰ってこなかった。
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