場所をリビングに変えて、私は奏介とソファに並んで座り、藤悟さんにお願いするに至った経緯を説明した。


「奏介、昨夜も急に仕事になっちゃったし、今日も忙しそうだったし。でも次のお茶会は来月だし。早くお作法身につけたくても、私の我儘で奏介の手を煩わせたくなくて」


熱い紅茶に息を吹きかけながら口に運ぶだけで、奏介は私の説明の間、一言も言葉を挟もうとしなかった。
彼の目はずっと紅茶に伏せられているから、なにを思っているかいまいち読めずに、不安になる。


「ね、奏介。私、奏介のために頑張るから」


私は話し終えてからそう続けて、彼の方に身を乗り出した。
奏介が自分の足の上に置いた手に手を重ねて、ギュッと力を込める。
彼は無言で重なった手に視線を流し、紅茶のカップをテーブルに戻した。


奏介は、まるで苦虫を噛み潰したような渋い顔をしている。
そんな表情に怯み手を離した私の前で、なにか言いたげに口を動かす。
けれど、結局、そこから漏れたのは溜め息だった。


「……君は、変なところで頑固だな。初めて知った」

「ご、ごめんなさい」


咎めるような言葉に目を伏せる私に、奏介が「しかし」と続ける。


「俺のためなどと言われたら、納得いかなくても止められないじゃないか」


『止められない』と言いながらも、奏介はまだ逡巡している様子で、大きな手で顔を覆い隠す。