シェヘラザード、静かにお休み
遠吠えが、聴こえて
斯くして、シーラはルイスの家へ留まることとなった。
物語はシーラを退屈させることはなかったが、身体が酷く重くなっていくことを感じ、動かねばと思い始めた。
「マリアさん、長靴貸してください」
「え? どこへ行かれるんですか?」
「お庭に!」
ルイスの隣の部屋から見える庭はとても荒れていた。草が伸びっぱなしで、元々植えられていた草花が見えなくなっている。
マリアから許しが出る前に、シーラは長靴を履いて外に出ていた。
「シーラさん、気をつけてくださいね!」
「はーい!」
バルコニーから聞こえた声が背中にぶつかる。それに声だけを返して、庭の方へ歩いた。