シェヘラザード、静かにお休み
上司に提出した辞表は簡単に受理された。ルイスを引き留めたのはジャックだけだった。
「魔女が死ぬのが嫌か?」
上着のポケットに手を突っ込んだ状態でジャックは尋ねた。段ボールを持つルイスの隣に並ぶ。
「処刑は最初から決まってたろ」
「一緒に居て情が移ったとか」
ジャックの言うことは全て正しかった。ルイスはとても彼女の処刑される姿を見ることはできない、と思っていた。
それに昨日、既に別れの挨拶は済ませた。
どっちにしろ彼女に会う機会はもうないのだ。
「まさか」
「……帰ってどうするんだ。家の手伝いでもするのか?」