珈琲プリンスと苦い恋の始まり
理由の解明
「久し振りだな。その後、店の調子はどうだ?」


月末の収支報告をする為に本社へ顔を出した俺を見て、親父は開口一番そう訊いた。

一ヶ月ぶりに会った息子の体調は気にならないのかよ…と思いながらデスクに近寄り、持参してきた資料を手渡す。


「まあまあだ。平日はともかくとしても土日祝日の収入か大きい」


持ってきた売上の資料にサラリと目を通した父は、「ふむ」と満足そうな笑みを浮かべている。


「流石だな。思っていた以上に売り上げがいい。
実はあんな田舎町で店が成り立つのかな、と少々疑ってはいたんだが、これなら別の土地への出店も可能そうだな。
同じ立地条件でなら、売り上げもそれなりに期待出来る」


詳細な情報を読み返しながら、ふと目を止める。
それにじっと見入っていたが、顔を上げて俺に訊ねた。


「この『悠々売上』というのは何だ?」


トンと指先を置く。
俺は(きたきた)とほくそ笑みつつ、一歩デスクに近寄り説明をしてやった。


「それは隣町にある老人施設の売り上げだよ。月に二回、ボランティアで出張してるんだ」


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