8章 抑えきれない思い


けたたましく電話のベルが鳴っている。

一瞬、ここがどこだかわからなかった。

ゆっくりと体を起こし、目を開けるとようやくこの場所が小樽のホテルの部屋だと気付く。

完全に眠りから覚めていない体を一喝して部屋に備え付けの電話まで這うように向かい受話器を取った。

「はい」

「アコ?お前、ずっと部屋にいたのか?」

部長の心配気な声に一瞬で目が覚める。

「え?は、はい。部長?」

「なんだ、まさかまた部屋で眠りこけていたんじゃないだろうな」

「そのまさかです」

「ったく、お前ってやつは。何度スマホにかけても出ないし心配するじゃないか。今何時だと思ってる?」

え?

部屋の置き時計に目をやると、まさかの午後8時だった。

「俺も今日は商談が長引いて7時半頃ホテルに入ったんだが、食事はまだだろう?1501号室の俺の部屋まで今すぐ来い」

「え?あの」

言い掛けているのに、電話はぶちっと切れた。

うわ、またやっちゃった。

私ってば、どんなけ寝てたんだろう。

しかもスマホが鳴っているのも気付かないなんて。

慌てて、バッグのスマホを立ち上げると、部長から何件も着信が入っていた。

私は髪を軽くとかして、部長へのお土産を持ち部屋を出た。


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