うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
『正しい合鍵使用のススメ』
午後から始まった開発企画会議は伸びに伸び、予定していた時間より一時間オーバーして終了した。

会議室の隅で私も参加していたけれど、途中から社長は時間を気にされていた。それもそのはず、今夜は取引先との会食が控えていたから。

「よかったよ、無事にまとまり終わってくれて。どうにか間に合いそうだ」

社長室で私が作成した取引先のデータを見ながら、安堵する社長。

「しかし時間にさほど余裕がございません。申し訳ありませんが、あと二十分後には会社を出ないと間に合わなくなります」

「あぁ、わかっている。キミが作成してくれた資料は車内で見ることにするよ」

「ありがとうございます。では私も準備をしてまいりますね」

今日の会食には私も同席する予定となっている。身だしなみを整え、失礼のないようにしないと。

オフィスに戻ろうとすると、なぜか社長は私を呼び止めた。

「あ、井上くん」

「はい、なんでしょうか」

すぐに足を止め振り返ると、社長は顔をホクホクさせながら人差し指を立てた。
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