大きな背中に腕を回し、必死に彼にしがみつく。

一生忘れないよう、彼のぬくもりを身体中に刻み込むように。

涙も止まった頃、私は自ら彼から離れ、苦しそうに顔を歪める彼に笑顔で伝えた。

「朱美さんは、私が廉二郎さんと出会うずっと前からあなたのことを想っていたんです。……あなたに相応しい朱美さんをどうか大切にしてください。そして幸せになってください」

「日葵……」

一方的に言い、茫然とする彼の手に無理やり鍵を握らせ、車から降りた。

そのまま振り返らず家に入るまで、廉二郎さんが追い掛けてくることはなかた。

きっと廉二郎さんは私の気持ちを理解してくれたんだ。それにこうするべきなんだって。だから追いかけてこなかったんでしょ?

これでよかったはずなのに、玄関のドアに寄りかかり力なく座り込んでしまう。

正しい判断をしたはずなのに、胸が張り裂けそうなほど苦しい。声にならない想いを涙に変え、私は一晩中泣きじゃくってしまった。